カーオーディオ用DSPを分解してみよう
アルパインから発売されているディジタルフェイズプロセッサ「PXA-H600」。
主な機能は下記のとおり。
・フロント/リア独立の4バンドパラメトリックイコライザ
・左前/右前/左後/右後/左SW/右SW個別に設定できるタイムコレクション
・周波数可変のサブウーファー用ディバイダ(-12dB/oct.固定)
・タイムコレクション自動設定機能
・Ai-NET対応ヘッドユニット/チェンジャーからはディジタル入力可能
あまり機能が豊富な部類ではありませんが、この手のプロセッサに最低限求められる機能は備えています。しかし、パイオニアのP1やODRなどといった最近の機種に比べると見劣りしますね。パラメトリックEQは調整ステップが粗いし、チャンネルディバイダはサブウーファーのみ。ディジタル入力はアルパインのトランスポートからでないと受け付けてくれないというのも不親切です。
そんな不満を解消してくれる最新鋭のプロセッサが、アルパインから登場しました。
PXA-H900、現在究極のマシンです。
でもこれ、38万円します。とてもじゃないけどそんな大金は出てきません。
そこで、H600をしゃぶりつくすことにしました。
これ、素材としてはなかなか悪くないんですよ。
ディジタル機能はタイムコレクションだけ、もしくは仕上げ程度にイコライザという使い方でもそのありがたみは感じられます。
ヴォーカルを運転席目前に移動させることもできちゃいます。
ディジタル機能を使わなくても、CDA-7949JGユーザなら別体D/Aコンバータとして使ってもよいでしょう。
・タイムコレクションは使いこなすと面白い効果が得られる
・20bit8fsのマルチビットD/Aコンバータ(PCM1702)を採用
・チューンナップの比較的容易な内部レイアウト
最近Yahoo!オークションでも出回るようになったので、入手も容易になりました。
私が蓋を開け基板を眺めながら適当に想像したブロック図です。
かなり大きな図になってしまいましたが…
ディジタルオーディオ機器ではおなじみのデバイスが多く使われています。
これらデバイスに関しては各社Webサイトからデータシートを入手することができるのも、非常に心強いところです。
http://www.cirrus.co.jp/ (CS8412,CS5330,CS4327)
http://www.bbj.co.jp/ (PCM1702)
http://www.npc.co.jp/ (SM5814H)
http://www.semicon.toshiba.co.jp/
(TC9412AF)
光ディジタルを復調するDAIレシーバに、CS8412を採用。ジッタを少なく抑える設計が特徴です。
アナログ入力はCS5330で18bitディジタル信号に変換され、CS8412出力との択一でDSPに送り込まれます。
どちらを使うかは制御用マイコンが決定し、74HC157でセレクトされます。 このあたりに細工すると、きっとAi-NET機以外からもディジタル入力を受けることができるのではないかと思います。
DSPについては省略。正直言ってよくわかりません。
D/AコンバータのPCM1702は、20bitDACの代名詞といってもよい存在。高級オーディオ機器でもよく採用されています。SM5841Hとのコンビネーションも、定番中の定番といえるでしょう。JubaのCDチェンジャー、CHA-S609も同じ構成だったはずです。ただ、あちらはアナログ部の設計が違いますけどね。
サブウーファ部は、D/A変換にCS4327を採用。低域だけなら1bit系の弱点もあまり気にならず、コストパフォーマンスの観点から合理的な選択といえるでしょう。
アナログLPFについての詳細はパスします。音質を左右する重要なポイントであり気になるところだとは思うのですが、両面基板の回路を追いかけるのが面倒になってしまいまして。ごめんなさい。普通の2次LPFのようですが…。
もし手を入れるなら、
・DACをKランク選別品に交換する
・電解コンデンサ交換
・OPアンプ交換
・Ai-NET機以外のトランスポートでもディジタル入力を有効にする
このあたりですか。
・リアチャネルを使わない前提で、リアのDACもフロント駆動用に回す
なんてのも面白いかもしれませんけどね。
- ご注意 -
これより下の記事は機器の改造について記述したものですが、改造行為を推奨するものではありません。
筆者はこの記事の内容や改造を行った結果に対して一切の責任を負いません。
すべては自己の責任において行ってください。
いったん改造してしまうとメーカーでの修理はまず受けられませんので、すべて自力で対応する必要があります。
この記事は、それなりの知識と経験をお持ちの方に対するヒントとして書かれています。
改造の際には、ある程度の知識がないと修復不能な破損を引き起こすおそれがあります。
また、内容に誤りがないとは限りませんので、お読みになる際にはその点ご留意ください。
見た目には地味な内部構成になっていても、部品の選定や回路構成の決定には、知識と経験の豊富な設計者の深い配慮が盛り込まれているものです。素人がこれに手を加える行為は、製品の持つバランスを崩す行為に他なりません。改造して好みの音質になればよいのですが、逆に崩してしまうことも考えられます。
ノーマル状態では、標準グレードのPCM1702Uがついています。
これを選別グレードのPCM1702U-JやPCM1702U-Kに交換すると、音質アップが期待できます。
このとき、半田ごてを入れるスペースを確保するために、PCM1702周辺の電解コンデンサを一時的に取り外す必要があります。 電解コンデンサも同時に音響用部品に交換するつもりで作業するとよいでしょう。
PCM1702UはSOPパッケージですので、除去にはコツがいります。
また、スルーホール基板ですので電解コンデンサも取り外すときは細心の注意が必要です。
電解コンデンサはびっしりと密集しているので、直径5mm以内のものを使用してください。
6.3mmのものも入らなくはないのですが、これでもかなり窮屈です。
耐圧は6.3v以上あれば十分です。
私はサイズの制約と入手が容易なことから、BlackGate-N/NXを使用しました。
BlackGateN/NXの足には長短があって、巻き方向を知ることができます。
発売元の話では、うまく使うとL成分をキャンセルできるそうです。
±電源のパスコンに使う場合は、グランド側に同じ長さの足、+電源と−電源にもう一方の足という向きにすると少しはよいのではないかと思います。
音の余韻、微小音の表現に効果があります。
・OPアンプのパスコン
音質に対する影響の大きい箇所です。
数値と品種によって、帯域内バランスを変えたりピークの出る場所を移動させたりすることができるようです。
現在、BlackGate-NやニッセイのMMT積層ポリエステルを中心に試行錯誤中。
品のよさと高域の楽しさはニッセイですが、少々濁っていてもBG-Nの方が声に生気があります。
ただ、数値を大きくしていくとどうなるかな?
・TC9412入出力のカップリング
電解コンデンサが使われていますが、その気になれば積層ポリエステルコンデンサに変えることもできます。
現在、TC9412入力側(2.2uF)にはニッセイMMT、出力側(0.47uF)にはシヅキのSMCを入れています。
いずれも積層メタライズドポリエステルコンデンサで、小さくて比較的安価です。
・出力端子のカップリング
低域の出方を変えられえるようです。
あまり吟味していないのですが、今のところBlackGateNを入れています。
・アナログLPF
470pFのポリエステルコンデンサが入っていましたが、ポリプロピレンに交換しています。
品種にはあまり選択の余地がなさそうですが、数値を変えてLPFの効きを変えてみるという楽しみはありそうです。いっそ1次にしてみたりフィルタレスにしてしまうとか。
OPアンプは、SOPパッケージの4560(JRC)が標準です。
私はOPA2604(BB)に変更しています。
ここも周囲のコンデンサをいったん外さないと作業になりません。