その6 アーシングしてみよう
電気で動く機器はすべて、バッテリーなどの電源からプラスとマイナスの線をつながないと動きません。
バッテリーのプラスから電流は流れ出し、電気を使う機器に入り、マイナス側の線を通ってバッテリーに帰ります。
クルマには、電気で動く機器が多数設置されています。
一番前にはヘッドライトを始めとする灯火類
エンジンにはイグニッションコイルやスタータ、コンピュータなど
車室内には計器類、照明、オーディオ、パワーウィンドウなど
クルマの最後尾にも灯火類
このすべてにプラスとマイナスの導線を引っ張るのは大変です。
そこで、クルマのボディにバッテリーのマイナス側の電気を落とし、マイナスの電位を持つ車体を「ボディアース」と呼ぶことにしました。これにより、ボディはマイナスの大きな電極として働きます。
こうしておくと、車内のどこかで電気を使いたいときにはプラスの電線だけどこかから引いてきて、マイナス側はボディに接続すれば済むのです。これが金属筐体の電装機器だったら、ねじでボディへ固定するだけでマイナス側の配線ができてしまいます。
効率的でスマートな方法ですね。
でも、この方法、ひとつ欠点があります。
それは、電気抵抗が大きいこと。
ボディは鉄やステンレスなど、電気抵抗が銅より大きい金属が使われています。 しかも熔接やネジ止めで継目がいっぱい。さらに油脂にまみれていたり塗装されていたりして、電気を通すには不利な条件が多くあるのです。
電気抵抗が大きいと、負荷機器にかかる電圧も下がってしまいます。負荷機器へ行くべき電気がボディの電気抵抗によって熱として発散されてしまい、失われてしまうのです。
具体的にはライトの明るさが落ちたり、点火系の火花が小さくなったりしてしまうわけです。
あともうひとつ、アースには重大な役割があります。
すべての信号の基準であり、すべての電装機器にとって「地盤」でもあるのです。
地盤は常に平坦で強固でなくてはなりません。軟弱な地盤の上に建つ建物は外乱に弱く なります。
#ボディ剛性の低いクルマのサスペンションが理論通りに働かないのと同じようなものかもしれません。
カーオーディオでは、音の大小を「アースとの電位差」に変えて伝達しています。
もしアースが軟弱で、バッテリーとヘッドユニットとアンプのアース電位が違うと、その差は音となって現れます(ノイズというやつですね)。
アースが吸い込んだ外乱がマイナス側の一部にとどまり電位差を作ると、どこにアースを取るかによって電位差ができ、それがノイズとなって現れるわけです。
そこでアーシングです。
大電流が流れる機器、ノイズの発生源になっている機器、ノイズに敏感な機器に直接導線を引いてアースの根元へ直接落としてやるのです。
するとボディや溶接部、ボルトなど電気抵抗の多い部分を通らずに済むわけです。
大電流が流れる機器
・点火コイル(コイル内蔵デスビ)
・スパークプラグ
・オルタネータ
・インジェクタ
・スタータモータ
ノイズ源になる機器
・点火コイル(コイル内蔵デスビ)
・スパークプラグ
・オルタネータ
ノイズに敏感な機器
・オーディオ
・ECUユニット
・センサー類
このあたりと見当をつけて手を入れるのがよいでしょう。
まず、ビスやボルトには不用意にゆるめてはいけないものがあります。
代表的なのが、締めるときの位置や角度が重要で再調整が必要なデスビやオルタネータの固定部分。
これらは締めるときに再調整する方法を知らない場合にいじってはいけません。
締めつけ順が指定されている場合もあります。
ヘッドカバー固定ボルトなどは、熱で膨張したときに歪みが出ないよう締めつけ順が指定されています。
知らない場合はゆるめないのが賢明でしょう。
上記以外の箇所でも、過大な締め付けトルクをかけるとボルトやねじ山を壊してしまいますので、十分注意してください。
簡単な作業ですが、慎重に行ってください。
下記の作業例は、締め付けトルクが適正であれば難しい調整を要しない箇所をアーシングポイントとして選んだつもりです。
エンジンルーム各部(水色)に導線の一端をつなぎ、電源のマイナス側(緑色のいずれか)に直結します。
アースポイントは1点と定め、そこから放射状に各所へ配線するのがよい配線です。
マイナス端子にすべて落とすことが多いようですが、私はボディアース電極板に落とすことをお勧めします。
配線の数が増えても取りつけやすく、またここを1点アースのポイントと定めることは理にかなっていると思います。
特にオーディオの音質改善が目的であれば、ボディの一点ですべて落として、そこからオーディオのマイナス側も取ってしまうのがよいでしょう。
(バッテリーのマイナス端子からボディアース電極につながる線を強化するのが前提ですが)
図にすると下の写真のようになります。
使用する導線は、カーオーディオ電源用として売られている8sq(=8ゲージ)の線を使用しました。
22sq(=4ゲージ)を使うのも、よいでしょう。
各所との共締めに使う端子は、いわゆる裸の丸端子を使います。
導電性や耐食性の点からオーディオ用の金めっき端子がおすすめですが、電工用としてホームセンターで売られているものを使ってもかまいません。懐具合と相談して決めてください。
バッテリ・マイナス端子 / ボディアース電極
バッテリ(−)端子から、ボディアースになるべく太い線を追加します。
エンジン各所から引っ張ってくる線も、ボディアース端子へ共締めします。
エンジンブロック(1)
端子が直接エンジンブロックに接触するよう、ブロックと既設のブラケットの間へ
割り込ませるようにして締めます。
コイルやプラグから近く、大変効果のある場所です。
簡単に済ませるなら、こことバッテリ(-)端子をつなぐだけでも効果があります。
エンジンブロック(2)やインマニには既存のマイナス導線が取りつけられていますので、そこへ共締めするように導線をつなぐと効果的。
オルタネータの筐体には使っていないねじ穴がいくつもありますので、そこにボルトで端子を固定するのがよいでしょう。
低速トルクが増加し、より低い回転数で加速できるようになります。
オーディオの音質改善にも効果があり、静けさが増します。
工夫次第で、コストパフォーマンスの非常によい作業になることでしょう。
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