LM675/LM1875パワーアンプ


秋月でLM675Tというパワーオペアンプが売られています。
主な用途として「サーボアンプ、精密モーターコントロール、計測機器」が挙げられていますが、データシートに示された使用例を見れば、 スピーカーを駆動できることに気づくでしょう。 そのあたりはナショセミも心得ているとみえて、LM675のデータシートには4/8Ω負荷の場合の歪率データが明記されており、 ほとんど同じ内部構造のLM1875を「20W オーディオ・パワーアンプ」として発売しています。

というわけで、パワーアンプを作ってみました。LM675Tの代わりにLM1875Tも使えます。

アンプ回路図 (片チャネル、png)
ミュートリレー 回路図 (png)
電源回路図例 (png)
部品配置図  (部品面より、png)
感光基板フィル ム (部品面より透視、720dpi、png)




回路はオペアンプとしてベーシックな非反転増幅回路としました。容量性負荷による発振抑止のため出力にZobelネットワークがつながっており、定数は LM675/LM1875データシートの値をそのまま使っています。
この回路では直流ゲインを下げる工夫もしていませんし、入力カップリングコンデンサも省略していますが、とくに問題なさそうです。 もし組み立て後に大きな直流オフセットが観測された場合は、R1と直列に22uF〜100uFのコンデンサを挿入し、入力端子に10uF〜100uF程度のカップリングコンデン サを挿入してください。

C4,C5は2700uFとしていますが、実際には100uF以上あれば動作しますので、聴きながら容量を増減してもかまいません。
実機では1,000uFにしましたが、もう少し小さくてもよさそうです。

この回路図には示していませんが、入力端子に100kΩ(A)の2連ボリウムを接続しています。

ミュートリレー回路も作りました。
シャントレギュレータのTL431をフィードバック無しで使うと、2.5Vを境にON/OFFするコンパレータとして働くことを利用しています。
実機では3.9Vツェナーダイオードの代わりに4.1V品を使っていますが、3秒程度の遅延が得られました。
24V程度の電源で動作します。

電源についてはデータシートに±8V〜±30Vで動作するとありますので、 その範囲内で適切なものを用意してください。
実機では0-12-24V 3Aのトランスから出た交流をSBDのダイオードブリッジで整流、レールあたり約10,000uFのコンデンサを左右別々に用意して平滑することにより、 ±15Vを得ています。
LM675の電源除去比(PSRR)は高く、平滑後の安定化は必要ありません。
電源トランスに書かれてある電圧は、たいてい交流電圧です。これを整流平滑して得られる直流電圧は、
軽負荷時で1.41×( 巻線の公称電圧−ダイオード順電圧 )、
トランスから定格電力を引き出して巻線公称電圧の1.25倍程度になりますので、トランス選定の参考にしてください。
ただし負荷が極端に小さいとさらに10〜20%ほど電圧が上昇することがありますので、その場合でもLM675の最大電圧(±30V)を超えないように 注意しなくてはいけません。
RSコンポーネンツでトロイダルトランスを買うとコストパフォーマンス的によろしいかと。

ケースはタカチのMB-8を横向きにして使いました。LM675の放熱はシリコンシートを介してケースにネジ止めすることによって実現しています。 もっとコンパクトに作ろうと思えばできるとは思いますが、これくらい余裕があれば電源トランスとアンプ基板を離して配置することも簡単です。
このケースを長手方向正面として使うと、スイッチや端子類が上蓋へ、回路基板はシャシー側へと生き別れになります。 電源配線はコネクタで上下分離できるようにしておき、信号配線は少々長めにしておいた上でコードステッカーを使ってブラつかないよう固定しました。








部品表(アンプ基板、ミュートリレー基板)

番号 品 名 記事 主 な入手先
IC1,IC2 LM675T LM1875Tでも可 秋月,マルツ,RS,Digi-Key
C1,C2,C6,C7 0.1uF パナソニックECHU(X)1H104 50V耐圧品 千石,RS,Digi-Key
C3,C10 0.22uF 積層メタライズドフィルム MMT,MTF,ECQV等
C4,C5,C9,C10 2700uF 一般アルミ電解 音響用推奨
R1,R6 1KΩ 音響用推奨
R2,R7 22KΩ 音響用推奨
R3,R8 音響用推奨
R4,R10 1KΩ 音響用推奨
R5,R9 22KΩ 音響用推奨
R11 2.2KΩ 1/8〜1/4W
R12 68KΩ 1/8〜1/4W
D11,D12 1N4148 小信号スイッチング用(1S1588相当)
ZD11 3.9V ツェナーダイオード(HZ4B2,RD3.9E等)
C11 33uF 一般アルミ電解
IC11 TL431

RY11 G5V-2-DC24V RA24W-K(富士通/高見澤)でも可 マルツ,共立(G5V-2)、ボントン(RA)

鳴らしてみる

低音に弾力があるのが特徴で中低音にかけて豊か。
ふくらみとかまろやかさとか、あと高域の透明感がもうちょっとあってもいいとは思いますが、それでも総じてなかなかいい感じです。 ICアンプも捨てたもんじゃないですな。回路基板自体はコンパクトなので、実装を工夫したらもっと小さく作れそうだし。
他の作例で測定をされた方の製作記事を見ると、LM1875の歪み成分は2次高調波の割合が多いようです。

CD-816やTDA1541Aの自作DACで聴くといい味出しているように思いましたが、 前作のFN1242A自作DACと組み合わせると中域がガサガサして嫌な感じでした。 なぜでしょうね。

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